「言われたことしかしない」子供との向き合い方:小学校低学年・高学年別の原因と、忙しい親が主体性を育む方法、親の葛藤解消ヒント
「言われたことしかしない」子供との向き合い方:小学校低学年・高学年別の原因と、忙しい親が主体性を育む方法、親の葛藤解消ヒント
子供が自分で考えて行動せず、「言われたことしかしない」と感じる時、親としては不安や焦りを感じることがあります。特に忙しい中で効率を重視するビジネスパーソンの方にとっては、つい先回りして指示を出してしまい、子供の主体性が育たないのではないかと葛藤することもあるでしょう。
本記事では、子供が「言われたことしかしない」原因を小学校低学年と高学年の年齢別に分析し、忙しい親でも実践できる主体性を育むための具体的な関わり方、そして親自身が抱える葛藤を解消するヒントを提案いたします。
子供が「言われたことしかしない」と感じる主な原因(年齢別分析)
子供が指示待ちになってしまう背景には、様々な要因が考えられます。年齢によってその背景は異なってきます。
小学校低学年(6歳〜8歳頃)
この時期の子供は、まだ論理的な思考力や将来の見通しを立てる能力が発達途上にあります。
- 認知能力の発達段階: 物事を多角的に捉えたり、複数の選択肢の中から最適なものを選んだりすることが難しい段階です。具体的な指示がないと、何をどうすれば良いか分からないという場合があります。
- 経験の不足: 自分で判断し、行動して成功したり失敗したりする経験がまだ少ないため、未知の状況に対してどう振る舞えば良いか見当がつかないことがあります。
- 親への依存: まだ親への依存度が高く、親の指示に従うことで安心感を得ている側面があります。
- 親の関わり方: 親が先回りしすぎる、失敗させないように過度に介入する、指示を出す方が早いと判断して機会を奪っている、といった親側の無意識の行動も原因となることがあります。
小学校高学年(9歳〜12歳頃)
高学年になると、抽象的な思考や自己管理能力が芽生え始めますが、この時期ならではの原因も出てきます。
- 失敗への恐れ: これまでの経験から失敗を経験したり、他者と比較されたりしたことで、自分で判断・行動することに自信をなくし、失敗を恐れるようになることがあります。指示通りに動く方が安全だと考えるようになります。
- 自律性の芽生えと葛藤: 自分でも判断したいという気持ちがある一方で、親の期待に応えたい、あるいは反発したいという複雑な感情が絡み合い、かえって指示待ちになることがあります。
- 「どうすれば良いか分からない」の隠蔽: 低学年のように素直に「分からない」と言えず、分かったふりをして指示を待つ、あるいは思考停止してしまうことがあります。課題が複雑になり、自分で解決する糸口が見つけにくい状況も増えます。
- 「楽だから」という理由: 自分で考えるより、誰かの指示に従う方が楽だと学習してしまうことがあります。これは、考えるプロセスにメリットを感じられなかったり、指示通りにすれば怒られないといった経験からくる場合があります。
- 親のコントロール: 親が子供の行動を細かく管理しすぎている場合、子供は自分で考える必要がないと感じるようになります。
主体性を育むための年齢別・実践的な関わり方
子供の主体性を育むためには、単に「自分で考えなさい」と言うだけでなく、具体的な関わり方の工夫が必要です。年齢別の発達段階を踏まえたアプローチが効果的です。
小学校低学年向けの関わり方
具体的な経験を通じて、自分で「選ぶ」「決める」「やってみる」機会を増やすことが重要です。
- 小さな「選択」の機会を作る:
- 「今日の服はどっちにする?」「お風呂の前に絵本を読むか、ブロックで遊ぶか、どっちがいい?」など、日常の小さなことから子供に選ばせます。
- 選択肢は多くしすぎず、2〜3個に絞ると選びやすくなります。
- 「どうしたい?」と問いかける:
- 例えば、宿題の時間が来たら「宿題やろうね」だけでなく、「宿題、どこからやろうか?」「どのペンで書こうか?」と問いかけ、子供に考えさせます。
- 片付けの時間なら、「どれから片付ける?」と具体的な対象について問いかけます。
- 「やってみようか」と促す:
- 自分で何かをしようとしたら、たとえ時間がかかっても、多少不格好でも、まずはやらせてみます。
- 難しい様子であれば、「まずはここからやってみようか」「手伝ってほしい?」と寄り添い、最初の一歩をサポートします。
- 成功体験を積ませる:
- 自分で決めて実行できたこと、たとえ結果が完璧でなくても、自分で考えたプロセスや頑張った過程を具体的に褒めます。「自分で考えて〜を選んだの、すごいね」「最後まで自分でやろうとした努力が素晴らしいね」
- 成功体験が、次の自分でやってみようという意欲につながります(自己効力感の向上)。
小学校高学年向けの関わり方
自分で考え、計画し、実行する、というプロセス全体をサポートする視点が中心になります。
- 「どうすれば良いと思う?」と問いかける:
- 宿題が多くて困っている様子なら、「宿題、多いね。どうすれば全部できそうかな?」と問いかけ、解決策を考えさせます。
- 友達との間でトラブルがあったら、「どうしてそうなったと思う?」「どうしたら良かったかな?」と、原因分析や代替案を考えさせます。
- すぐに答えを教えるのではなく、考えるためのヒントを与えたり、情報を一緒に探したりするサポートを行います。
- 計画を立てるサポートをする:
- 夏休みの宿題や週末の予定など、少し先の見通しが必要なことについて、「いつまでに何をしたい?」「そのためには今日何をすればいい?」と一緒に計画を立ててみます。
- 計画は子供自身に考えさせ、親は実現可能性や優先順位について建設的なフィードバックを行います。
- 任せて、結果を一緒に振り返る:
- 自分で決めたことや、自分で考えた方法で実行した結果を見守ります。
- うまくいった場合は「自分で考えてやったからうまくいったね」と自己評価を促し、うまくいかなかった場合は「どうしてうまくいかなかったんだろう?」「次はどう工夫したらいいかな?」と、失敗から学ぶ機会とします。この時、親が責めるのではなく、共に原因を探求する姿勢が重要です。
- 自分の意見を持つことの大切さを伝える:
- 社会の出来事や家庭内のルールなどについて、「あなたはどう思う?」と意見を尋ね、子供自身の考えを表現する練習をさせます。
- 親と違う意見でも頭ごなしに否定せず、「そういう考え方もあるんだね」「どうしてそう思ったの?」と理由を聞き、議論する姿勢を見せます。
忙しい親が抱える葛藤と解消法
子供の主体性を育むためには、時間と忍耐が必要です。しかし、忙しい日々の中では、つい指示を出してしまった方が早く済む、失敗されると後始末が大変、といった理由から、子供に任せることを躊躇し、葛藤を抱えることがあります。
- 「完璧」を目指さない:
- 子供が自分で考えて行動しても、最初は非効率だったり、失敗したりすることは当然です。結果の完璧さよりも、自分で考え、行動しようとするプロセスそのものを評価することが重要です。
- 親自身も完璧なサポートをしようと気負う必要はありません。できる範囲で、子供に考える機会を与えることを意識します。
- 「待つ時間」を意識的に作る:
- 朝の準備など、時間が限られている時は難しいですが、週末や比較的余裕のある時間帯に、子供が自分で考え、行動する「待つ時間」を意識的に作ります。
- 「今日は〇〇を自分で考えてやってみようか」と事前に伝え、親も心構えをしておくと良いでしょう。
- 夫婦で方針を共有する:
- どちらかの親が指示型になりがち、もう片方が見守りがち、など、夫婦間で対応が異なると子供は混乱します。
- 「子供の主体性を育む」という目標を共有し、具体的な場面での声かけや任せ方のルールについて話し合い、可能な範囲で一貫性を持たせる努力をします。忙しい中でどう協力できるかも話し合うポイントです。
- 親自身の「失敗への恐れ」と向き合う:
- 子供の失敗を見守るのが怖いのは、親自身も失敗を避けたい、完璧でありたい、といった気持ちがあるからです。
- 親自身の失敗談を子供に話すことで、失敗は悪いことばかりではない、そこから学べることがある、というメッセージを伝えることができます。また、自分自身も失敗から学び成長してきたという経験を思い出すことで、子供の失敗を受け入れやすくなります。
- 「効率」と「育成」のバランス:
- 常に子供に考えさせる時間を持つことは難しいのが現実です。時間がない時は効率を優先し、指示を出すこともやむを得ません。
- しかし、週に数回、あるいは1日のうちの短い時間でも、「この時間は自分で考えさせよう」と意図的に時間を作ることで、少しずつ子供の主体性を引き出すことができます。全てを任せる必要はありません。
まとめ
子供が「言われたことしかしない」という状況は、子供の成長段階や環境要因が複雑に絡み合って生じます。小学校低学年と高学年では、その背景や効果的なアプローチが異なります。
忙しい日々の中で、子供に自分で考え、行動する機会を与えるのは簡単なことではありません。しかし、小さな選択の機会を与える、問いかけ型のコミュニケーションを取り入れる、失敗を乗り越えるサポートをする、といった日々の積み重ねが、子供の主体性や自立心を育む上で非常に重要です。
親自身も、子供の失敗を恐れる気持ちや、つい手を出してしまう衝動といった葛藤と向き合い、完璧を目指さず、できる範囲で子供に任せていく姿勢を持つことが大切です。夫婦で協力し、子供の主体性育成という長期的な視点を共有しながら、根気強く関わっていくことが、子供の健やかな成長につながります。